なぜ、今、日本でDXが議論されるのか 〜 注24

公開: 2021年4月26日

更新: 2021年6月7日

注24. 日米貿易不均衡問題

1980年代、米国社会は増え続ける一方の対日貿易赤字に悩まされていた。これは、毎年、米国が日本から輸入する物品への支払額と、米国が日本へ輸出する物品から得る販売額との差額が、輸入超過で赤字続きであったことを問題にしていたことを意味する。一般に2国間の貿易では、輸入額と輸出額は、互いに相殺され、合計するとその差はほぼゼロとなるのが常識である。

一方の国の輸入額が、常に輸出額を上回れば、為替市場において、輸出額の多い国の通貨が、輸入額の多い国の通貨に比べて、不当に低く評価されているとされ、通貨安と認識されて為替市場の相場で調整が行われる。日米間で言えば、ドルが高く、円が安く評価されるので、円高にすれば良い。しかし、日米間について言えば、円はいつも安く、ドルはいつも高かった。

日米の政府間での話し合いでは、1970年代から長期に渡ってこの問題が議論されたが、円安ドル高傾向は変わらなかった。この状態について、米国政府は、日本政府が意識的に円安を誘導しているのではないかと主張し始めていた。日本政府の意向を受けて、日本銀行が、市場が円高に振れると、大量にドル買いをして、円安に誘導していると考えたのである。これは、日本政府が、輸出によって利益を得ている企業を守るためであると考えられていた。

また、日本政府は、第2次世界大戦後、長期にわたって外貨不足に悩まれたため、日本からドルなどの外貨が大量に流出しないよう、輸入品に高い関税をかけていた。このため、日本社会では輸入品は常に高価となるため、日本市場では外国製品の販売量は少なかった。このように、外国から輸入される物品に高い関税をかける政策を、「関税障壁を設ける」と言う。日本政府は、米国製品に高い関税をかけているため、米国から日本への輸出が少ないと考えられた。米国は、この問題も日米貿易通商会議で議論した。しかし、この2国間の貿易不均衡問題は、それほど単純な問題ではなかった。

参考になる読み物

日米経済摩擦、小倉和夫、日本経済新聞社、1983